2008年04月20日
EO 2
EO社インシグニア ちなみに旧ローデシア陸軍特殊部隊
「セルーススカウツ」もこれと同じサソリの柄を部隊章に採用していた。
続き
短期間で4000名近い「社員」を確保したEOは、南アフリカが手を引いた後も内紛が続くアンゴラ政府(かっての旧南アフリカ軍が戦った相手)から崩壊した国軍の再建を依頼されます。EOの軍事アドバイザー(旧南ア軍特殊部隊メンバーら)は短期間でこれを実行。再建されたアンゴラ軍は反政府勢力UNITA(旧南ア軍が援助した勢力)と一進一退の攻防を繰り広げます。アンゴラ政府からの次のオファーは直接戦闘である「軍事力の提供依頼」でした。
1994年当時、ソビエトの崩壊によりソ連製武器の多くが国外に流出、EOはウクライナ系旧ソビエト軍人を雇用しMil24D「ハインド」やBMP2 IFVを装備、運用しており、その規模は小国の正規軍を上回るものでした。またそれを運用する「社員」と「顧問」は長年ゲリラ戦を戦い抜いてきた者たちであり、長期間南アより援助を受けて来たとは言えUNITAが敵う相手ではありませんでした。EOは民間企業であるにもかかわらず戦闘ヘリ、装甲車、歩兵による「エアランドバトル」を実行。UNITAは支配地域を急速に奪還され資金源であったダイヤ鉱山を失い弱体化、UNITA議長J・サビンビの死亡により内紛は終息します。
続いてのオファーは映画「ブラッドダイヤモンド」の舞台となったシエラレオネ。当時のシエラレオネはアフリカに多く見られる独裁政権とそれを打倒するあらたな独裁者候補の権力とダイヤを巡る内戦が続く混沌とした情勢でした。反政府組織は映画でも登場する隣国リベリアのリベリア国民愛国戦線(NPFL)の支援を受け首都フリータウンに迫ります。窮地に陥ったシエラレオネ政府はEOへ軍事的直接介入を依頼、EOは量的な不利を覆す計画と近代兵器の運用によりこれを撃退します。
EOが見せたアンゴラ、シエラレオネでの実績は民間会社初の軍事的成功として脚光を浴びます。
しかし1998年に南アで制定された外国軍事援助法(傭兵のトレーニング、募集、および使用を含む私的な利益のための武力衝突における戦闘員としての直接的な参加の禁止)により非合法組織と認定され解散します。
しかしEOが示したコンセプトは湾岸戦争後、軍事のアウトソーシングに向けた法整備が行われていたアメリカで注目され、その後設立される多くのPMCがモデルとしたことは有名です。尚、有名なPMCであるブラックウォーター社のオーナー、E・プリンスは最終的に目指す企業形態は現在の警備を主としたものよりEOのような軍事力の提供であると発言していました。
EOは南ア政治の転換期及びソビエト崩壊、冷戦終了が重なり生まれ、アフリカ諸国の中では他に類を見ない新生南ア政府の自制的政策により消えます。しかし民間軍事企業の可能性と「旨味」を世界に示した初のモデルとして歴史の隅に記録されることでしょう。
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。