2008年06月13日
Insurgency War11
Executive Outcomes Members
つづき
連投しております「Insurgency War」は、米中心で語られがちな精鋭特殊部隊や対ゲリラ戦について、切り口や視点を変える事で各国の文字通り「血で購った」技術が現代の戦術や兵器、装備に息づいている事を確認するのを目的としています。
「Insurgency War」もNo.11となり、話題の背景は記憶に新しい世界の出来事が中心となります。東西冷戦の象徴であったベルリンの壁が崩れ、ソビエトを中心した東側諸国の変革は世界に新たな秩序と混乱をもたらします。
東西冷戦終結後、世界に「新たな危機」の存在を告げたのが「湾岸戦争」であったと思います。危ういながらも米ソ二大国によって保たれていた均衡は崩れ、成りを潜めていた国家間、地域間、人種間、宗教間の対立が再び燻り始めます。
「湾岸戦争」がエポックメイキングであったのは多国籍軍の中核を担ったアメリカの疲弊ぶりと、それを補う為に検討された「軍事の民間委託」でしょう。米は湾岸戦争において、大動員時の後方人員(主に兵站を担う部門を指し、兵士の食事や物資輸送、護衛、捕虜の収監管理を含む)不足を痛感し、直接戦闘に関与しない部門の民間委託に着目。J・Hブッシュ大統領(当時)、チェイニー国防長官(当時)の指示により、湾岸戦争からイラク侵攻の間に米では民間企業による軍後方支援が研究、推進されます。
当初、非戦闘員を中心に考えられていた「軍事の民間企業委託」は、ある企業の「事業内容」「業績」が注目され解釈が拡大されていきます。それが世界初の民間軍事会社
「エグゼクティブアウトカムズ(Executive Outcomes)」でした。
湾岸戦争と時を前後した1989年、南アフリカは長年続いた白人支配体制の終焉を迎えようとしていました。対アンゴラ戦における南ア特殊作戦の主力を担った陸軍特殊部隊レキースコマンド、越境侵攻部隊32大隊、南西アフリカ警察対不正規戦部隊SWAPOL-TIN(通称KOEVOET)は解散します。また、南ア版KGBとして海外で南ア政府に不利益をもたらす団体、個人に対して脅迫、暗殺を行ったとされる文民協力局(Civil Cooperation Bureau)は閉鎖されます。
正確な資料、情報はありませんが、これら特殊技能を備えた人員を雇用し「軍事力を提供する企業の設立」が欧州の複数の企業(鉱物資源採掘会社、石油会社、輸送会社等)によるネットワークの中で計画されます。こうして設立されたのがエグゼクティブアウトカムズ(Executive Outcomes 以後EO)でした。EO初代代表は32大隊、文民協力局に在籍していたE・バーロウが就任します。
バーロウはコネクションを利用し職を失った元レキース、32大隊、KOEVOETのメンバーを募集し短期間で多くの人員を確保、相次ぐ東側諸国の崩壊に伴い大量に流出し始めた武器(AKなどの小火器に留まらずMil-24ハインド、Mil-8ヒップ ヘリコプター、BMP-2歩兵戦闘車、ボーイング707ジェット旅客機など)を調達します。
南アの地で終わりを見せたと思われた英SASからの対不正規戦戦術の系譜は、「PMC」という新たな存在の中で再びアフリカの地に姿を表します。
※このブログではブログの持ち主が承認した後、コメントが反映される設定です。