2008年06月18日
Insurgency War12
つづき
Executive Outcomes(エグゼクティブアウトカムズ 以後EO)は世界初のPMC(民間軍事会社)として活動を始めます。PMCイコール傭兵の形態変化と考えられていますがEOの場合、「民間企業による軍事力の提供」という意味ではPMCの特徴を備えていますが、米CIA(中央情報局)がラオス、カンボジアで行った「秘密戦争」や、その主力「現地傭兵軍」の特徴をも備えていました。
曾て米CIAは外国政府の転覆や内乱の実行をも辞さない組織であり、それらの秘密工作にはCIA所属エージェント以外に、所属が秘匿された工作員も多数おり、兵士の徴募、組織化、運用を行っていました。「現地傭兵軍」の主力はCIA工作費で雇われた現地住民、指揮運用は工作員(軍事要員、準軍事要員)が行っていました。CIAが直接指揮、運用を行う「現地傭兵軍」はEOR(交戦規定)に縛られず、正規軍と比較して即応性に優れていた為に局地的な戦闘には有効であったと言われます。ベトナム戦と並行して行われたカンボジア、ラオスでの戦闘は米正規軍が直接関与せず表面的には「米の介入がない戦争」となっていましたが、その実、CIAが主導した戦争として明らかになっています。
EOの場合、武力、軍事力提供の際の主力は元32大隊等に所属した兵士が努め、指揮は元特殊部隊将校、下士官クラスが行ったとされています。EOはオファーから短時間で1500名ほどの「社員」を指定の地域に配属可能としていました。指揮、直接戦闘の各セクションとも、以前は南ア特殊作戦の主力として機能していたために指揮系統は確立されていたと思われます。また、負傷者の搬送にボーイング707旅客機を使用するなど、CIAが組織した「現地傭兵軍」よりも小回りが利き、兵站はより充実していたと考えられます。
この様にEOは昔の「傭兵」とは様々な面で異なり、また今までにない企業として注目されます。代表のE・バーロウは以前所属した文民協力局(CCB)時代に築いたコネをフルに活用し国際的大企業(デビアス、シェブロン、テキサコ)と契約を結び、紛争危機を抱えた国家の「依頼」を実行。インドネシア他、多数の政府をクライアントとしており訓練等の軍事アドバイス「サービス」の提供を行いました。
EOのクライアントの多くは国内に反体制武装勢力を抱え、対不正規戦のノウハウを必要する国家や、それら政情不安な地域に利権や生産拠点を持つ企業でした。(シエラレオネは正規軍自体が貧弱で、首都フリータウンが陥落寸前であった事から「直接武力行使」となった珍しいケースであり、以後登場するPMCでもここまで大規模な戦闘を行った企業は存在しません)
EOは民間企業でありながら、近代兵器を備え、不正規戦ノウハウを提供する事は前代未聞でありアンゴラ、シエラレオネでの実績から非常に注目を集めましたが南ア政府による「非合法企業認定」により、その活動は呆気なく終了します。
つづく
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